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伊三次が死んだ(鬼平犯科帳)

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鬼平犯科帳、ケーブルテレビでずっと再放送をしている
平成元年7月に始った第4代目の鬼平役吉右衛門シリーズがいい、その「五月闇」は非業に密偵の伊三次が死ぬ
小生が師事(?)するカルチャーのスーパー講師(女性)が好きなのが鬼平の密偵伊三次
小説「鬼平犯科帳」の主人公は鬼と言われただけのことがあって盗賊にもモテる
小生も小説の密偵の中で作者が力を入れている伊三次(いさじ)という男が好きだ
伊三次には泥棒としての業と男としての業が合わせ描かれている

伊三次は捨て子である、小説によれば伊勢の関宿の宿場女(女郎)たちに育てられた
10才で油屋に奉公にあがるが・・・、それしか生きていく道がなく、捨て子の素性でやがて悪の道に入る
悪の道は仕方がないことながら、それゆえの業を持っている
伊三次の20代は盗賊の配下だった
29歳のときに盗賊の女房と逃げる、その女を殺す
その後鬼平に拾われ、密偵を勤める

役宅の長屋で寝起きする、きびきびとした動きが出来る一方、地面を這いながらで一人で生きてきた男を描いている
人が好きではあるが人とは〝つるまない″男である
あるいはそのときそのときを生きていくことに精一杯であるが、変体が下手な男である・・が、生き抜ける力は持っていたと思う
〝希みもないが死ぬ度胸もない″伊三次である
鬼平の登場人物の中で同じく密偵おまさと並んで人気のあるキャラクターでもある
テレビでは最新版では平成元年から俳優三浦浩一が演じている
鬼平は無頼派であっても高級官吏である旗本、作者は主人公の男としての這いつくばってる男の業の部分を伊三次に置き換えて書いているように思う

しかし、伊三次の素性は泥棒である、過去に人も殺した
それでいて一分の隙もなく密偵として働く二つの面を持っている
いかに鬼平に拾われようともどうしようもないというものを作者は描いている
伊三次にとってはもう一つ密偵としての業を増やしただけのことだからだ
岡場所のおよねと一緒になったらどうかと鬼平に言われ、泥棒としての過去を捨てようと思いかけた時に昔の業によって昔女房を盗ったその盗賊に殺される
実は伊三次を殺したのは作者である
昔の業を逃れられない密偵の男を書きたかったからである、と
小説連載中、伊三次の死は作者にも重くのしかかっていたという
その鬼平に多くの女性ファンがいたのは嬉しいことだ
女性ファンは伊三次が好きみたいだなと思った
もちろん男性ファンはおまさ(梶芽衣子)の次におよね(池波志乃)が好きである
それにしても役者も我らと同じように齢をとってきた
最初の放映で伊三次が死んだのは平成7年である
それから20年、鬼平シリーズはとことん再放送で楽しむのが面白い
写真はカナヘビ
鯵庵(28.8.31)
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by ajiankyoto | 2017-10-02 18:32 | おとこ編 | Comments(0)