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衣笠丼の行くえ

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京都の大衆食堂では衣笠丼(きぬがさどん)という
衣笠とは京都の地の名である
金閣寺のある山や左大文字の山のあたりだと思えばいい
衣が笠にように山にかぶっているという意味である
その山にちなんだ地域メニューが衣笠丼である
甘く炊いた油揚げと青ネギを卵でとじたものだ
卵でとじるところがキツネ丼との一番の区別だと思えば間違いがない
山椒で食す
そもそも廉価にして味のよい・・丼である
油揚げと九条ネギと卵と言えば京都食品の王道である

ある店で通ぶって衣笠丼を頼んだついでに、
「京都も衣笠丼を出す店も少なくなったね」とお追従を言ってみた
給仕取締役のおかみさんから「そうでもないですよ、どこでもやってますよ」という返事が返ってきた
たしかに大衆食堂なら昔は何処でもやっていた
もともと材料はどの店にもあるもの
特に油揚げの味に左右されるが、京都は豆腐屋の街なのである
油揚げの素朴なおいしさの中に暮らしがあるくらいだ
食堂の腕が発揮できるのは出しと炊き加減だけのことである

そこら中定食屋がはびこって、そんな衣笠丼をメニューに出さない食堂が多くなったのが不思議だったのだろう
その言葉の裏こそ、京都のおなご、おかあちゃんの京都風の自慢だったのだろう
昭和の時代、京都の職人が昼に、しかも仕事の手を休めて食うのにふさわしいランチである
と、すれば今はそれが廃っていくのも当たり前かもしれない
京都の庶民の味を守りたいおかあちゃんの言葉に聞こえた
それが証拠に料理係の息子さんも衣笠丼と聞いたとたん一言いいたくてうずうずしていた・・
ようにも見えた
鯵庵(29.9.21)



by ajiankyoto | 2017-09-21 17:48 | 大衆食堂 | Comments(0)