2021年 12月 08日
おかめの災難
亀という名だそうだ、阿亀(おかめ)と呼ぶ
鎌倉時代の初め、都の大工の棟梁のご内儀である
長井飛騨守高次という名前を持っていたということだから相当な棟梁である
鎌倉時代の初めに建てられた千本釈迦堂の本堂である
応仁の乱に焼け残った最古の木造建築で国宝になっている
斗栱(ときょうとよむ)という寺社建築に多用される梁を受ける方法がある
夫の柱の長さが合わない失敗を聞いて妻のお亀が助言したという
微妙な表現だが・・
「古い記憶を思い出し『いっそ斗栱をほどこせば』というひと言、この着想が結果として成功をおさめ見事な大堂の骨組みが出来上がったのです」
と言う
必ずしも発明したとも設計したともまた指図したという訳でもなさそうである
だがしかし、お亀は自ら命を絶った
「この身はいっそ夫の名声に捧げましょう」と思ったからである
・・、これが漏れ聞こえ女の提言で棟梁が勤まっているように言われたのでは、という
夫は上棟の時、妻の面を御幣につけて建築の完成を祈念したという
ような話が、京都のお亀伝説としてお亀像と碑が立っている
斗栱(枡組み・ますぐみ)は奈良時代にも使われておりはるかに古くからあった
そんなことで命を絶つというのは解せない話である
お亀がいない方が上手く行くという解決の仕方は人の道ではない
こんな極端な思い込みはお亀("おかめ"ゆえの)独特の感性なのだろうか
作り話であるとしても、バカバカしく哀れである
ただ、お多福(本来は女神)の信仰にかこつけたかった話であろう
お亀の、平たい顔にほお骨がはった顔は古からの日本人の代表的な骨格である
千年たってもそれはまだ続いている、しかも今は醜女(しこめとよむ)を意味している
本当に亀と言う名だったのだろうか
亀という名は一番縁起がいい名である、多くの亀さんに失礼である
ただこの話、飛騨高山の国分寺七重の塔のにも同じような話が伝えられている
こちらは娘だ、八重菊と言う、棟梁は自分のために娘を殺した
その代り娘は天然記念物の大イチョウになった
それにしても何故殺さねばならないのかわからない
こういう伝説の作り方は文学としても臭い、建築には人柱がいるのだろうか??
もちろん建築物が火災にも合わないことは建築主(必ずしも建築会社の願いとは重ならない??)の最大の願いでもある
お亀をたたえる像には、水野建設の他、錢高組・飛島建設・清水建設・大林組などの大手ゼネコンの寄進の名も見えた
なんとなくゼネコンの古風な女性観が見えるような気がして余計な勘繰りをしてしまった
鯵庵(28.12.5)
by ajiankyoto
| 2021-12-08 08:22
| 翁草
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