2017年 02月 16日
あなたはどの役をしますか
八代目松本幸四郎である、初代の白鸚(はくおう)である
還暦まで91本の鬼平を演じた
東宝の作品である
池波正太郎はこの幸四郎をイメージにして小説を書いた
あの小太りでおっとして見えるのが鬼平であるの感じ
もう一人の小太りが木村忠吾である
古今亭志ん朝が演じている
うさぎ顔の女好き、うさ忠という鬼平にへばりついても憎まれぬ同心役である
小説やドラマの狂言回しの役どころである
古今亭志ん朝は珍しい落語名人だったが、このあたりのドラマ出演がいい滋養になったのだろう
息子に忠吾と名付けたとどこかに書いていた
仮にあなたならどんな役をやりたいかと聞かれればであるが
拙者は木村忠吾である
鬼平も盗人の親分も勤まる筈がないし、どう探しても、出来るとすればやはり忠吾しかないだろうね
だが、実際は役どころとしては一番難しいらしい
「気が弱いのに明るい」という性根を演じることは難しい
志ん朝はよく演じていたと思う
気が弱いことも明るいことも間違っても軽いことではない
どの役でも、命を懸けて生きている様を演じなければならない
下手すれば自分など端役すら勤まらないと思わせられる
鬼平犯科帳は歌舞伎でもなければ、劇画でもない
幸四郎も歌舞伎を演じているのではない
し、志ん朝も落語を語っているのではない
それが、ドラマなんだろう
人生の中で本当に演じられるものでないとドラマにはならないと思う
それから20年の後にその幸四郎の次男中村吉右衛門が鬼平犯科帳の人気を不動のものにした
それは、吉右衛門が鬼平の息子長谷川辰三を演じていたことにもよる
やせて尖った辰三であったが、いい親子の機微がドラマにも出ていた
歌舞伎ではないドラマだった
それはやはり幸四郎が息子吉右衛門を鬼平の役が出来る役者に育てたいと思ったのだと思う
残念ながら、小太りの名人志ん朝のうさ忠の後がいない
鯵郎(29.2.16)
by ajiankyoto
| 2017-02-16 08:27
| 翁草
|
Comments(0)