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おふくろの味?


有名豆腐屋の店先で豆腐をかじっている旅行者に出くわす
豆腐豆腐というけれど、気の利いた豆腐はあっても特別な豆腐は無い筈
そこまで驚かなくてもいいような気がする
1丁200円もすれば御の字
どこそこに限らず寒くなれば湯豆腐など毎日やし、芋棒もただの家庭料理

家庭では、いい〝出し″と新鮮な野菜、豆、時に海のものや鳥、後は豆腐と油揚げ、みんな近所で手に入るもの
これにちょっとの工夫と作ってくれる人がおれば〝おかず″は出来る
どちらか言えば内陸型食材が特徴である
それを特別に〝京のおばんざい″と丁寧に言うてくれる人もいる
おばんざいとは京都風のいい音ではあるがどちらかと言うと最近の造語である
突っ込んだ研究する人に言わせるとおばんざいの〝ばん″は番茶と同じ番であるという
ストレートに言うと下級と言う意味だとすら言う

京都にないものがある
実は″おふくろの味″である
そういうと驚く人がいるが、実は京都には〝おふくろ"がいないからである
京都や大阪で育った人で母親のことをおふくろと呼ぶ人は今だ知らない
母親は"母"であり"おかー″であり"おかん"、"かかさん″である
それ以外にも色々あるが、たとえば花柳界・路地の家でも全て"おかーちゃん″といえば、
本当に親であろうとなかろうと最高の親愛の情の表現である
繊細(?)なのである、それに対しておふくろは鄙(ひな)の言葉である
都会には、"おふくろ"という言葉が存在しないんだから「おふくろの味」はないわけである
ならば・・、それはただの家庭料理である

世界中の料理は大きく分ければ宮廷料理と家庭料理に区別される
その上であえて細分すると、家庭料理は料亭の料理、仕出し屋の料理、商家の料理、庶民の料理などに細分される
何百年も公家も庶民も日常は家庭料理である
それを表現する適切な言葉が存在しない
だから"おばんざい″や"おまわり″などという言葉を引っ張り出さなければならない
庶民の料理だって、粗末ながら工夫を凝らした数百年のレシピが確立されているわけである
料亭の料理も家庭料理である
神様に供えたり、やんごとなき行事に出される料理以外は皆家庭料理である
鯵庵(29.12.1)

by ajiankyoto | 2017-12-01 01:00 | 大衆食堂 | Comments(0)