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鬼龍院花子が好きな男

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小生の伯父が東大阪の生駒山の麓、往生院を下ったところに住んでいて・・片肌くらいにモンモンがあった
が、その趣味はヤマガラとメジロだ
特にいつも朝早くからカスミ網とおとりメジロを持って山を登って行く
そんな時、時に遊びにいってる10歳の少年小生は小さな懐中電灯を持ってついていくが、何も手伝う訳ではない

地元の鋳物工場で働いていた伯父はその時まだ40代ぎりぎりの小生の実の叔母を後妻にしていた
伯母や連れ子を大事にするように血もつながらない甥っ子の小生を大事にしてくれた
実は伯母も当時では鉄火肌だった
こんなことをいつも思う・・
「鬼龍院花子の生涯」って映画があるけれど主役夏目雅子が鬼龍院花子ではないことを知っている人は意外と少ない
鬼龍院花子は鬼龍院の妾の出来の悪い娘の方なのだ
伯母はどちらかというと鬼龍院家のその花子の方だった
その伯母を拾ってくれたのがその伯父だった
野心のない昭和の香具師(やし)だったが、戦後は1から100まで優しかったようだ

メジロを獲って可愛がって、調子がよければ人にやって、上手く行けば人に売るんだが・・
家の中が鳥かごだらけだったし、その毎日は練り餌の味を吟味し、時に泣き声がよければニンマリするらしい
その伯父もいつまでも元気なわけでない
小生が大人になってしばらくの頃に病気で亡くなった
伯父は小生をメジロ獲りの跡継ぎにしてみたいようだったが、そうはいかなかった
すでにカスミ網はご法度であった、もちろん時代も変わっていた

戦前昭和のモンモンを消す訳にいかんかったけど堅気に一度だって絡んだことのない人だった
親に勝手に家を早くに捨てたそのか細い鉄火の伯母と連れ子の娘を混乱の時代一人で面倒見てくれた
ついでに小生も・・なのだ
仮にだけど一番愛してたのがメジロだったとしても・・それを小生に皆くれるというのだ・・?
もらっても困るけど・・それは究極の男性論理だと思う

そのメジロ好きの男の味を知ってるのは結局もう75になるいとこ姉と小生だけになってしまった
可愛がってくれた叔母のことは忘れない
伯父が恥ずかしそうに見せてくれたモンモンの柄は忘れたけれど
カスミ網を隠して背負って後ろの小生を見ながら山を登っていく後ろ姿は忘れられない
明治45年の生まれだったから、今年は仮に生きていたって105才になる
当たり前だけど・・伯母の好きなそんな男もいなくなった
花子のような出来の悪さが可愛くなってくる
小生もその叔母の血を引いているような気がしてきた
鯵庵(30.2.7)

by ajiankyoto | 2018-02-07 09:07 | 女紋 | Comments(0)