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精霊送り/京都の盆の過ごし方

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京都の地の人は″おしょうらい(お招霊)”さんと発音のする人が多い
いかに招いた霊であっても所詮一緒に長い間暮らすことは叶わない
16日にはまたあの世に送り返す訳であり、それを精霊送り(しょうりょうおくり)と言う
今は音頭の声が聞こえなくなったけど盆踊りも精霊送りでもある
お供えと一緒に川に流したり、松明の火で現世の穢れを清める行事が行われる
各家庭・各町内やお寺や墓地でも精霊送りの行事が行われる
大量に供物を川に流す精霊流しは問題がありとのことで、代わりに京都市ではお供えの処分もしてくれる
それを大がかりにしたのがおそらく室町時代にはあったとされる「送り火」である
送り火が見えるところでは、も一度各家庭のご精霊さんもまとめて送ってもらえる
その上、旅の人も参加できる観光にも都合のいい送り火である

今は京都のお盆の観光は「五山の送り火」が代表する形になった
午後8時に東山銀閣寺の上の如意が岳の大文字が点火される
「妙法」「船形」「左大文字」続いて、一番西の奥嵯峨野の「鳥居形」が点火されるのが8時20分ごろになる
そのころはもう最初の大文字は消えかかっている
小生が初めて送り火を見たのは、親に手を引かれ田舎から京都駅に帰ってきた列車の中だった
東海道線はその時まだ蒸気機関車だった、列車が鴨川鉄橋を渡るころだったかな
眠たいのに起こされたように記憶している
京都駅のあの辺りからも大文字は見えたように思う
ただ、大文字が見えるのはいつも一瞬なのだ

昔(旧暦の頃)の送り火は天気がよければ必ず満月とセットである
山の陰の黒と群青の空の色は明らかに違う
月と大文字と精霊流しの灯りを一緒に見ることのできた昔の人の感慨は想像できない
月遅れで行われるお盆の行事では毎年8月16日の月齢は変わる
この時間に東山に上手く月がかかることの方が珍しくなった
それでも、鴨川堤防から見る大文字は絵になりやすい
今出川橋や丸太町橋あたりまで行けばよく見えるかもしれないが
わざわざ出かけていく大人は少ない
実は燃えているのは15分にも満たないからだ

この一瞬の静寂ゆえに、俗っぽい京都のお盆もこの日だけは侘しさを感じさせられる
五山の火を全て楽しめるのは難しいが、それでも数十分だ
テレビ中継ではそれぞれの火床の周りの人が映し出される
その人たちにとっては行(ぎょう)なんだと思う
そうなんだ、それもまた精霊を送る送り火なんだと思わされる
全ての火が消えてしまって京都のお盆が終わる
地上には現に生きている人だけのまた迷い多き生活が始まる
これで盆が終わるのかと思いきや、京都の夏は24日の地蔵盆に向けての準備がはじまる
鯵庵(30.8.15②)

Commented by ago1-filo2 at 2018-08-16 12:04
愚息は、京都の大学に通っております。
京都が大好きなよそもんです。
祇園祭に続き、今日は送り火のアルバイトへ。
なぜ高時給の塾講師を休んでまで・・と思いますが
ベビーカーで近所のお地蔵さんを探していた彼が
中古自転車で出町周辺を走り回っている姿を想像すると
『読む京都』を読んでビビリながらも、
何か御縁があるのかもと ひとり納得しております。
by ajiankyoto | 2018-08-15 07:00 | 地蔵菩薩 | Comments(1)