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下段の剣(鬼平犯科帳)

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二代目中村吉右衛門が「鬼平犯科帳」に出ている
鬼平の息子、長谷川辰三の役をしている
辰三の憧れる剣客は盗人の用心棒をしている
親父鬼平(初代松本白鸚)の昔世話になった浪人である
が、下段の構えは邪剣だという

吉右衛門の辰三は痩せてひょろっとして捉えどころのない演技であった
いかに凡才であるかを演じなければならないとしても必ずしも上出来ではない
少し真面目過ぎる
実の親父の息子役をするとすればあんなものかもしれない
が、その時の親父(その時はまだ松本幸四郎であった)を見ていたことは確かだ

それから数十年の年月が経って自分が親に続いて鬼平を演じた
それも終わってまた年月が経って吉右衛門(播磨屋)の名で人間国宝にまでなった
そういう栄誉は別にしてもそこまでしてもまだ一役者を務められる
役者というのは根っからの芸術家だと思う
若い時の未熟な芸でも自分で見ることができる
逆にそれが死に至るまで役者をやめられない理由だろう

親と一緒に演じた鬼平の息子役を見て今どう思うのだろうか
吾ら凡人にとって若いころの不出来は思い出しても耐えられない
仮に再現フィルムで見せられたら生きていけない程の自己嫌悪に陥るだろう
人間は天才・秀才・凡才の3種があると言われる
その3っつともを兼ね備えるのが役者であるが

それもそうだが、親が身をもって見せてくれた芸こそが天賦の才というものだろうね
鯵庵(1.7.15)

by ajiankyoto | 2019-07-15 19:51 | 翁草 | Comments(0)