2023年 06月 15日
14.リリーと寅
フーテンの寅をもてない男と見てはいけない
そう見える人は自分の貧弱さを言ってるに等しい
確かに寅は多くのインテリ女性が好きで、ほとんどふられてきた
だからと言って、寅がいつも女に好かれない訳ではないのだ
「寅さんとリリーさんはいつ結婚するのでしょうか?」
と周りも気にする
リリーはインテリではない、浮き草稼業の旅の歌手である
そのリリーが寅と結婚することを夢見て、一瞬承知した
リリーは言う
「女の仕合せは男次第だと、男は皆思っている」
でも、寅なら違うかもしれない??
でも、寅は言う
「リリーは頭のいい、気性のしっかりした女だから・・
馬鹿(自分)と一緒になって仕合せになれるわけがない」
寅はリリーのひもになるぐらいの能力は持っている
「女の仕合せは男次第だと」と勘違いしてほしい一瞬だった
が、それでは軟弱な馬鹿になるし、フーテンとは言い難い
賢い女もそんな時にやわになる
仕合せがあるとしたら馬鹿にならなければ得られない
どちらも馬鹿だが・・男の馬鹿と女の馬鹿は種類が違うのだろうね
いずれにしろ賢い女のそんなやわな瞬間を外してはもはやチャンスはない
そんなことを作者は言いたかったのかもしれない
♬どぶに落ちても 根のある奴は
♬いつか蓮(はちす・ハスのこと)の花が咲く
曲山本直純、星野哲郎作詞
リリーは渡り鳥である
だがしかし渡り鳥は巣を作るために渡っている
現実だったらその方がいいに決まってる
好きな女と一緒になったのではフーテンでなくなる哀しさだ
何よりもこの頃の浅丘ルリ子が一番きれいだ
化粧が嫌味でない役だったし、本当に熱い唇が尖っていた、いい大人の女を演じていた
鯵庵(R5.6.15)
2023年 06月 14日
13.嫁に来ないか
1976年(S51)新沼謙治唄う
♬しあわせということば ぼくにはキザだけど
♬嫁に嫁に来ないか
♬からだからだひとつで
(阿久悠詞)
別に不思議なことではない
私たちもそうだった
みんなそうだった
小さな結婚式だった
だけどほんまもんだった
確かに世間が狭かった
でも、結婚するのに
嫁と言われるのが・・どうだとか
そんなことを言う人はなかった
家と家との結婚なんて思ってる人はいなかった
ただ、二人の意志だけで結婚できるなども思ってはいなかった
それからゆっくり二人で世間を広げてきた
先のことは分からないまま、ながらも
結婚は雨の日に妻や子を守ってやる覚悟だと思っていた
例え出会いがしらのことと言えど・・・
「嫁に来ないか」と言えたあの時が一番男らしい瞬間だった
男にとって、「嫁と言われて」と喜んでくれたことが一番うれしかった
それが花嫁である
それが互いの人生の始まりだった、と今でも思う
鯵庵(R5.6.14)
2023年 06月 12日
12.この俺を捨てろ
世間は白黒だけではない
正か邪かだけでもない
善か悪だけでもないだろう
秤(はかり)はそれだけじゃない
例えば・・
味と言うのもあるのではないか
周りに味のいい人が一人もいない
そんな不思議かもしれない
♬世間の風の冷たさに
♬幸せなんて望まぬが
♬人並みでいたい
(1974/S49さくらと一郎・山田孝雄詞)
昭和枯れすすきとはよく言ったもんだ
ともかく枯れる前に貧乏から脱却したかった
味のいい人に出会えた人は幸運だった
鯵庵(R5.6.12)
2023年 06月 10日
11.ノラは都会で生きる
穀物のあるところネズミがいる
猫を船に乗せる
その起源はエジプトの時代にある
それが世界中に猫の種類が広がった訳だという
そう言えばぬくぬくと幸せそうな猫が多い
都会の真ん中、真黒な猫がいる
暗いところで黒猫を見ると不吉だ
夜でも猫の目は人間の目の6倍の視力があるという
初め一匹だったけど、何故か今は3匹になった
この猫家族は温かい思いをしたことはない
餌をやる人はいる
今まで生きてきたのだから、食ってはいる
世間は絶妙のいじめで出来ている
街にはネズミもいる訳だからひょっとしたら食っているかもしれない
野生本能がなければ都市では生きていけない
♬だって2っ上あたし損な年
♬どうせ明日もノラ街で悪戯(わるさ)するの・・
(2つ上が損なのはピンとこないが悪さは分かる)
野生では身の危機に対して闘うか逃げるかの選択を迫られる
しかもその判断は一瞬のうちにしなければならない
食われたくなかったら逃げればいいが、それでは食料は手に入らない
人間は勝てない勝負をしないというのもそれである
闘わなくとも肉は食える
野生と野良とは違う
闘って自分で食料を手に入れるのを仮に野性としよう
都会の闇の中では智慧が無くては野良だって生きていけない
餌をくれる人にはすり寄る
人を恐れるが恨まないのが野良だろう
そんな歌のように聞こえたからノラはやはり野良のことだとおもう
余談ながら飼いネコは人間に媚びを売ってなお人間の真似をする
ぬくぬく年とった猫は最後に人間に化ける
その上とことん人の幸せをねたむという
それを妖怪猫又(ねこまた)という
野良は寂しく生きているように見えるが人を恨まない
間違ってもそんな猫を羨ましく思わないのがノラの生き方なのである
門倉有希が歌う、作詞はちあき哲也
鯵庵(R5.6.9)
2023年 06月 08日
10.検事に妹あり
映画「検事とその妹」は戦前(S12)の日活映画
原作は劇作家竹田敏彦の小説(検事の妹)である
その時の主題歌である
兄妹愛のメロドラマに社会派サスペンスで味付けしたような内容である
基本的には兄の学業を助けるため妹が女給などして働く、そうして生きてきた
似たような境遇の2組の兄妹が検事と被告の側で向かい合ってドラマが進むわけである
それはさておき、我が国で司法試験に合格するということは
古き中国のあの公務員試験科挙とほぼ同じことなのだ
合格さえすれば自分も支配階級になれる
今の日本にも司法試験合格者だけの言葉と世界がある
検事を辞めて弁護士になる
弁護士が政治家になって政治家を辞めても弁護士をする
政治が出来るのは司法試験合格者でなければならない
・・と思ってる人たちの集団もいる
鯵庵は勝手に今、愛唱歌「検事とその妹」の歌を思いだしている
歯を食いしばってせめて兄だけでも世に出ていってほしい
夫婦は一心同体だし、姉なら親代わりでありそうだが、・・・
それにしても異様な兄妹愛である
でも、あれから数十年、その人たちの成れの果てを見ているとこがある
その検事や弁護士が悪徳弁護士やタレントで金儲けする構造もおかしい
法律は自分たちのためにあると思って勉強してきた人ばかりでは困る
改めて、正しく生きる人のために仕事してもらうためには・・
運転免許更新のように更新講習と認知症検査くらいは課すべきである???
それはさておき、この歌「人生の並木路」と言う
この歌しか歌わない友人がいたが、確かに何年たっても歌える
少し歌詞の中の「♬我が世の春」が気にかかる
苦学する兄妹が憧れるのは自分たちの春でこそあれ
決して"我が世の春"ではないはず
我が世の春は言葉のとおりなのだが、
何事も自分の思い通りになることを言いかえた言葉でもある
検事になれば支配階級になれる、まさか本音のまま?
いずれにしても並木道を歩いている兄妹は道の先に立身出世が見えている
それが本音だとしても驚かないが、声高に歌う歌詞には少し違和感がある
多くの人には並木道ではなくて五里霧中の方だろう
戦前の価値感なんだろうと思う
そもそも、今時そんな苦学生なんかどこにもいない
詩人佐藤惣之助は(S17没)は「人生劇場」、「六甲おろし」の作詞でも有名である
鯵庵(R5.6.3)